盛岡地方裁判所 昭和49年(わ)16号 判決 1974年10月07日
本籍
岩手県北上市大通二丁目二六〇番地
住居
同県同市大通二丁目二番三三号
職業
土木工事請負業
藤本純一
大正一五年一月一三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官江川功出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月および罰金四〇〇万円に処する。
被告人が右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和三四年ころ井上工務店代表者井上勝之助の死亡により同人の事業を継承し、昭和四〇年ごろには藤本工務店の商号のもとに岩手県北上市柳原町一丁目三番一六号に主たる営業所を、千葉市他七ケ所に現場事務所を置き、個人企業として土木工事請負業を営むほか、自己の下請先に営業資金の貸付けを行い、利息収入を得ていた者であるが、右事業に関し、自己の事業の経営を安定して続けるために自己資金の蓄積が必要であると考え、右資金蓄積のため所得税を免がれようと企て、事業所得については材料費、労務費、外注費などを架空に計上し、また雑所得となる貸付金の受取利息については全額これを除外し、これによつて得た資金を簿外預金とするなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、
一、昭和四五年分の実際所得金額は、別紙一「修正損益計算書」並びに別紙二「ほ脱所得の内容」各記載のとおり六、七五二、五九〇円であつて、これに対する所得税額は別紙三「脱税額計算書」記載のとおり一、六六八、七〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四六年三月一二日、岩手県花巻市花城町一一番三六号所在の所轄花巻税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が一、六四六、四二九円でこれに対する所得税額が五九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同年度分の正規の所得税額と右申告税額との差額一、六〇八、八〇〇円の所得税をほ脱し、
二、昭和四六年分の実際所得金額は、別紙四「修正損益計算書」並びに別紙五「ほ脱所得の内容」各記載のとおり一五、〇四三、二六七円であつて、これに対する所得税額は別紙六「脱税額計算書」記載のとおり五、五六三、五〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四七年三月六日、前記花巻税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が一、四五六、〇五四円でこれに対する所得税額が三五、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同年度分の正規の所得税額と右申告税額との差額五、五二八、三〇〇円の所得税をほ脱し、
三、昭和四七年分の実際所得金額は、別紙七「修正損益計算書」並びに別紙八「ほ脱所得の内容」各記載のとおり二四、七二一、五五二円であつて、これに対する所得税額は別紙九「脱税額計算書」記載のとおり一〇、九六〇、〇〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四八年三月一〇日、前記花巻税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が二、三九七、一九四円でこれに対する所得税額が一五八、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同年度分の正規の所得税額と右申告税額との差額一〇、八〇二、〇〇〇円の所得税をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき、
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、被告人の収税官吏に対する、昭和四八年三月二三日付、同年四月二三日付、同年六月一〇日付(一九枚綴のもの)、同年八月三日付、同年八月五日付(一一枚綴のもの、および六枚綴のもの)、同年八月七日付、同年九月一二日付、各「質問てん末書」と題する供述録取書
一、三田玲子の検察官に対する供述調書
一、三田玲子の収税官吏に対する昭和四八年八月六日付「質問てん末書」と題する供述録取書
一、三田玲子作成の「上申書」と題する書面
一、斉藤晄一の収税官吏に対する昭和四八年六月三〇日付「質問てん末書」と題する書面
一、大蔵事務官矢部貞夫作成の調査書二通
一、下瀬川光男の収税官吏に対する「質問てん末書」と題する供述録取書二通
一、千田正人の収税官吏に対する「質問てん末書」と題する供述録取書二通
一、検察事務官作成の電話聴取書
一、押収してある銀行勘定帳一綴(昭和四九年押第三五号の三)、未払金仮受金明細帳一綴(同押号の四)、税務関係書類一綴(同押号の一〇)、銀行関係明細一綴(同押号の一二)、手形期日元帳一綴(同押号の一五)、手形受払簿一冊(同押号の一六)、約束手形控(藤本工務店)一枚(同押号の一七)
判示一の事実につき
一、被告人の収税官吏に対する昭和四八年九月一四日付(六枚綴のもの、および三四枚綴のもの)「質問てん末書」と題する供述録取書
一、斉藤博彰、荒井清治、田川文明、山本歌子、依田勇、浜村禎一の収税官吏に対する各「質問てん末書」と題する供述録取書
一、上野六郎作成の「上申書」と題する書面
一、大蔵事務官宗像日出雄作成の調査書
一、押収してある伝票綴一綴(昭和四九年押第三五号の一)、諸経費明細帳一綴(同押号の二)、請求書領収書綴一綴(同押号の五)、現場資金収支報告書一綴(同押号の六)、賃金台帳一綴(同押号の七)、株式関係一綴(同押号の九)、受領書一綴(同押号の一三)、四五年度分の所得税の確定申告書一綴(同押号の一四)、振替伝票一一綴(同押号の一八)、見積複写簿一冊(同押号の二〇)、売掛帳二枚(同押号の二一、二二)、建設請負綴一綴(同押号の二三)、請求書一綴(同押号の二四)、請求書二冊(同押号の二五、二六)、領収書一冊(同押号の二七)、日誌(ノート)一冊(同押号の二八)、売上帳一綴(同押号の二九)
判示一、二の各事実につき
一、被告人の収税官吏に対する昭和四八年六月一〇日付(一二枚綴のもの)「質問てん末書」と題する供述録取書
一、被告人作成の「上申書」と題する書面
一、斉藤博彰の検察官に対する供述調書
一、押収してある長野リフト工事経費明細綴一綴(昭和四九年押第三五号の八)、現金出納帳一綴(同押号の一九)、
判示一、三の各事実につき
一、被告人の収税官吏に対する昭和四八年九月一四日付(八枚綴のもの)「質問てん末書」と題する供述録取書
一、三田玲子の収税官吏に対する昭和四八年三月二二日付「質問てん末書」と題する供述録取書
一、押収してある日誌一冊(昭和四九年押第三五号の一一)
判示二、三の各事実につき
一、被告人の収税官吏に対する昭和四八年三月二一日付「質問てん末書」と題する供述録取書
一、押収してある土浦用水路移設工事関係書類一綴(昭和四九年押第三五号の三三)、総勘定元帳一綴(同押号の三四)
判示二の事実につき
一、三田玲子の収税官吏に対する昭和四八年三月二三日付「質問てん末書」と題する供述録取書
一、穂積千束男、高井敏明の収税官吏に対する各「質問てん末書」と題する供述録取書
一、押収してある伝票綴一綴(昭和四九年押第三五号の三〇)、諸経費明細帳一綴(同押号の三一)、現場資金収支報告書一綴(同押号の三二)
判示三の事実につき
一、三田玲子の収税官吏に対する昭和四八年六月八日付「質問てん末書」と題する供述録取書
一、菅原増一、佐々木安二の収税官吏に対する各「質問てん末書」と題する供述録取書
一、押収してある伝票綴一綴(昭和四九年押第三五号の三五)、諸経費明細帳一綴(同押号の三六)、賃金計算内訳書一綴(同押号の三七)、賃金計算台帳二綴(同押号の三八、三九)、現場資金収支報告書(茨城地区)一綴(同押号の四〇)、現場資金収支報告書(住金鹿島製鉄所関係)一綴(同押号の四一)、支払関係明細帳一冊(同押号の四二)、北上バイパスⅢ期工事綴一綴(同押号の四三)、北上バイパス日報綴一綴(同押号の四四)、北上バイパス工事収支明細書一綴(同押号の四五)、請求書領収書一袋(同押号の四六)、昭和四七年度資金勘定元帳一綴(同押号の四七)、昭和四七年度損益勘定元帳一綴(同押号の四八)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項にそれぞれ該当するので、その所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、判示一ないし三の各罪は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示三の罪に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役六月および罰金四〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、なお被告人に対し諸般の情状を考慮して、同法二五条一項によりこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 大内捷司)
別紙一
修正損益計算書
自 昭和45年1月1日
至 昭和45年12月31日
<省略>
<省略>
修正損益計算書
自 昭和45年1月1日
至 昭和45年12月31日
<省略>
<省略>
別別紙二
ほ脱所得の内容
自 昭和45年1月1日
至 昭和45年12月31日
<省略>
<省略>
別紙三
<省略>
<省略>
別紙四
修正損益計算書
自 昭和46年1月1日
至 昭和46年12月31日
<省略>
<省略>
修正損益計算書
自 昭和46年1月1日
至 昭和46年12月31日
<省略>
<省略>
別紙五
ほ脱所得の内容
自 昭和46年1月1日
至 昭和46年12月31日
<省略>
別紙六
<省略>
<省略>
別紙七
修正損益計算書
自 昭和47年1月1日
至 昭和47年12月31日
<省略>
<省略>
修正損益計算書
自 昭和47年1月1日
至 昭和47年12月31日
<省略>
<省略>
別紙八
ほ脱所得の内容
自 昭和47年1月1日
至 昭和47年12月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙九
<省略>